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私達はアクアラインを往復し、マンションの駐車場に車を停めて指輪を見に行った。
「もういいよ」
4件目の店を出て、私は亮に言った。
「駄目だよ、まだ見に行ってない所あるじゃん」
東京中の店を見てまわるんじゃないかというほど、亮は手当たり次第に店に連れていこうとする。
「もうキラキラし過ぎて、何がいいかわからないよ」
私は亮の腕を掴み、動きを止めた。
「休憩しよう。どこかでコーヒー飲もうよ」
私がそう言うと亮は渋々だったが、私達は近くにあったカフェに入った。
席に座ると私はとりあえずタバコに火をつけた。
「指輪、嬉しくないの?」
亮はタバコに火をつけながら、私に聞いた。
私は慌てて首を横に振った。
「嬉しいよ、嬉しいに決まってるじゃん」
亮は納得していない顔をした。
「あんなにいっぱい見てもわからないんだもん。とりあえずネットで探すから、来週候補を絞って見に行こう」
私は素直に思っていることを言った。
安い買い物ではない上に、一生に1つの指輪なのだから何か感じる気がするなんて私にも乙女みたいな部分があったようだ。
今日はいくら見ても何も感じないような気がしていた。
「わかった。じゃあ、そうしようか」
亮はとりあえず納得した顔をして、店員さんを呼んでコーヒーを2つ頼んだ。
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