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「結婚式はどうするの?」
マスターがお代わりを出しながら言った。
「あ…」
私は結婚式の事を考えていなかった事に気づいた。
「考えてなかったの?」
亮とマスターが呆れた声で、ほぼ同時に言った。
私はごまかすように笑った。
「他に考える事が多くて」
私が言い訳のように言うと、亮がため息をついた。
「結婚式に憧れとかないの?」
亮に改めて言われ、私は考えこんだ。
亮とマスターが私を見つめ、私の答えをじっと待っていた。
「誰かの結婚式に出ると、うらやましいとは思うけど…憧れ?どうだろう…」
私は素直に曖昧な答えを言った。
「西園寺さん、大変だね」
マスターがため息をつきながら亮に言った。
亮も小さくため息をついた。
「しょうがないじゃん」
私も軽くため息をついた。
「ウエディングドレス、着たくないの?」
マスターが不思議そうに聞いたから、私は苦笑いした。
「もう今年、35歳だよ。堂々と着れる年じゃないよ」
私は笑いながら言った。
ウエディングドレスを着たいと思ったことがないわけではないが、さすがにもう着たいと言える年ではないと思っている。
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