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「海外で式挙げる?」
少し考えていた亮が私に聞いた。
「え?」
私は想像もしていなかった提案に、びっくりして聞き返した。
「それいいよ。海外ならいろんな事、気にしなくていいじゃん」
びっくりしている私を置き去りに、マスターが目を輝かせて言った。
私は海外なら参列者に悩むこともないし、ウエディングドレス着てもいいかななんて思ってしまった。
「海外ありかもね」
私が少し考えて言うと、亮が嬉しそうな顔をして頷いた。
「陽子ちゃんは、もっともっと幸せになったほうがいいよ」
マスターが笑顔で私に言った。
「そのつもりだけど」
私がはっきりそう言うと、マスターは首を横に振った。
「欲しいものがあったら、欲しいって口にしたほうがいい。自分で考えて、勝手に答えを出す前にね」
私は苦笑いをして、タバコに火をつけた。
「西園寺さんは…西園寺さんと陽子ちゃんだったら、1人じゃ出せないような答えが浮かぶはずだよ」
私は視線を落として、ズブロッカの入ったグラスを見た。
諦めかけた結婚も出産も、亮と一緒なら大丈夫だと思った。
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