10年

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8月が始まった。 部長と行った打ち合わせは、何の問題も無く終わった。 帰りの電車で、部長に昨日の領収書を渡した。 部長はニヤニヤしながら領収書を見ていた。 「これは、自腹だな」 部長の言葉に私の顔が赤くなった。 「この店、行ったことは無いけど…バーだろ?接待って雰囲気じゃないよなぁ…」 私は何も言えず、奪い返した領収書を丸めてポケットに入れた。 「佐々木のことは、信頼してるから」 部長がぼそっと言った。 その後、私達は無言で会社まで帰った。 仕事は順調で、後輩達を定時に帰した。 社内を見渡し、前田を探したが見つけられなかった。 まだ、現場から帰ってないのだろう。 時間を確認すると、18時を少し過ぎたところだった。 前田が戻る前に帰ってしまおうと、パソコンの電源を落とした。 「こんな時間に帰るなんて、珍しいね」 嫌な予感がして振り向くと、前田だった。 「ちょっと、来い」 前田は強引に私を引っ張って行った。
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