25人が本棚に入れています
本棚に追加
「何故このようなところにいらっしゃるのですか!?如月さま!!」
「!?お、俺!?」
「!?如月さま?どうされたのですか??」
青年は、たじろぎ顔の莱に不安そうに話しかけながら近づいてくる。
「…(何がどうなってるんだ…何でこの彼は俺の名前を知ってるんだ?いや、正しくは苗字だけど…)」
「…莱さま??」
「!!…えっと、君は…」
莱は、青年に名前を呼ばれて驚かずにはいられなかった。
「!?私の事をお忘れなんですか?…丹羽五郎左衛門長秀でございます!!」
「!?(丹羽五郎左衛門長秀だって!?)」
「莱さま??」
「…人違いではありませんか?」
「!?そんなはずはございません!!その白莢と紅蓮は如月家の家宝ではございませんか!?」
莱の言葉に五郎左衛門は、悲痛そうにそう声を張り上げた。
「た、確かにそうだけど…」
莱は、あまりに悲しげな顔をする五郎左衛門にたじろいたようにそう声を上げる。
「では!!」
【ドカッドカッドカッ!】
五郎左衛門が、何か言いたげに口を開いたがその言葉はその場に響き渡る複数の蹄の音によって遮られてしまう。
「!?(今度はなんだ…)」
莱は、その音に僅かに身構えながら表情を険しくした。
「!?如月さま!!」
五郎左衛門は、その音に気付くと莱の元まで走りより、莱をその背に庇う。
そうしている間にも馬の蹄の音が徐々に近づいてくる。
「!?な!?」
「危険ですので、私の後ろにいてください!!!」
【ガッガッガッ!!!】
「おやおや、こんなところに織田の丹羽がいるとはな…」
五郎左衛門の背に庇われながら緊張した面持ちで近づいてくる音を聞いていた莱は、新たに現われた者達が敵であることがわかり顔をしかめた。
それは五郎左衛門も同じのようでその顔からは盛大な舌打ちが聞こえてきそうなほどだった。
最初のコメントを投稿しよう!