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「どうやらなんだかまずいほうに行き掛けてるみたいなんだが…」
「莱さま、ご自分の立場をお忘れなんですか?」
「…如月家当主…で、あってるんだろ?(少なくともあいつはそう言ってたし…)」
莱は、そう言って先ほど自分に向かって声を上げた敵のリーダー格らしい人物を見る。
「如月家…丹羽…莱さまを我々に差し出すというのならここは見逃そう…どうする??」
男は、莱ににやりと不敵な笑みを浮かべて丹羽にそう持ち掛けた。
男のその言葉に顔を歪めたのは莱本人だけではなくどちらかといえば五郎左衛門の方が今にもキレそうなほど顔を歪めて男を睨みつけていた。
「ふざけるな!!!貴様らのような者たちに莱さまを渡し生き延びるくらいならば私はここで自害する!!!!」
「!!…(自害って…)」
莱は、五郎左衛門の言葉に思わず固まってしまった。
「!ならば…この場にて死ぬがいい!!!!」
男が、声高らかにそう叫ぶとそれまで様子を見ていた武将たちが各々の腰元から刀を抜き、五郎左衛門に向けて構える。
「!!…五郎左…」
「莱さま。お下がりください…」
「バカ。何を一人で抱え込んでいるんだ…」
「…え?…」
「如月家の当主は…やわな者に勤められるほど軽い物ではない…」
莱は、何故か口からすらすらと紡がれるらしくない言葉に心の中で苦笑を浮かべながら男たちに向けて不敵な笑みを向けた。
その艶やかとさえも言える微笑に思わず、五郎左衛門をはじめ五郎左衛門と莱を取り囲んでいる男たちまでも若干顔を紅くして固まっている。
「ら、莱さま…///」
「…五郎左??」
「…な、何でもありません…(この方は…相変わらずですか…)」
五郎左衛門は、莱から視線を外し極々小さく溜息をついたのだった。
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