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「ハァ…ハァッ…」
莱は、回りに気を配りなが荒い呼吸を繰り返す。
「莱さま!…お怪我はございませんか?」
「ああ…五郎左…」
「はい…」
「礼を言う…ありがとう(全く、らしくないな…こんなことを言うのも…こんな行動を取るのも…)」
莱は、自分らしくない言動をする己に自嘲気味な笑みを漏らした。
「いいえ…これが私の役目…私こそ、お助けいただき誠にありがとうございます…」
五郎左衛門は、そう言って深々と頭を下げた。
「五郎…」
【ガッ!ガッ!ガッ!】
莱が、五郎左衛門に何か声を掛けようとしたところで新たな蹄の音がその言葉を遮った。
「!莱さま!こちらへ!!」
五郎左衛門は、急いで莱を背後に庇い辺りに警戒を向ける。
「先ほど逃がした奴らか?」
莱は、先ほど逃げた輩が仲間を引き連れて戻って来たのではないかと身構える。
「!(例え何人が来ようとも莱さまに手出しはさせぬ!!私の命に替えて…)」
五郎左衛門は、刀を握りしめ蹄の主に更に神経を集中させる。
「…左~!」
蹄の音が近づくにつれて次第に人の声が聞こえてくる。
「!あの声は…」
五郎左衛門は、その声を聞くなり小さくそう呟いた。
「五郎左?」
「五郎左~!」
「間違いない!莱さま、もう安心でございます!あれに近づいて来るは味方にございます!!お~い!犬千代~!!」
五郎左衛門は、嬉々としてそう言うと声の主に向かって叫び声を上げた。
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