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『お兄ちゃん、私、今日学校すごく楽しかった。』
ソファーに座ってくつろいでいたお兄ちゃんの前に座って、ニコッと笑ってみせる。
『お兄ちゃんの学校は、賑やかでおもしろいね。
理事長がりー兄でびっくりしたよ。
それから、希咲が同じクラスだった。
すっごく喜んでくれて、希咲ったら、みんなの前で大泣きしたんだよ。』
私がふふふっと笑うと、お兄ちゃんも、そうか、って言って微笑む。
うん。やっぱり希咲が同じクラスなの知ってたな。
りー兄と仕組んだんでしょ。
お兄ちゃんの反応でそう確信する。
さて、本題に入ろう。
『…だからね。お兄ちゃん、私、すごい幸せだから…
だから、今度は、お兄ちゃんが幸せになろう?』
私の言葉に、お兄ちゃんは、えっ?と眉を歪める。
そんなのお構いなしに、私は言葉を繋げる。
『…お兄ちゃん、彼女いる、よね。』
その言葉に、お兄ちゃんがハッと息をのんだのがわかった。
「…なんで知って…」
『そんなの、私、一緒に暮らしてるんだよ?
お兄ちゃんの変化なら、気づいて当然だよ。
…大切にしてるんだよね?』
「……。」
わかってた。
いつからか、お兄ちゃんから甘い香水の香りがすること、
電話で話すお兄ちゃんの顔が、りー兄達と話すときとはまた違う、
優しい顔をすること。
知ってたよ、お兄ちゃん。
それを私に隠そうとしていることも、全部。
わかってた。
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