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「蒼樹、居る?」 と言いながら入って来たのは、何故か私の思い人で。 私を見つけた彼は、あ、居た。と呟いて此方に向かって来た。 驚き過ぎて、また床に座り込むところだったのを何とか踏み止めて、平静を装って訊ねる。 「どうしたの、こんな時間に美術室に来て」 彼が少しずつ私に近づいて来て、内心穏やかではない。 「忘れ物。 美術の作品提出、今週末じゃん。 今日の授業中に終わんなかったから、家で描かなきゃダメだろ? だからそれ、取りに来たの」 横に立ち、部屋の隅に置いてあるキャビネットから一枚の絵を取り出して、ヒラヒラと見せてきた。
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