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私は否定も肯定もしてないけれど、出来ることなら彼には何も知られたくはない。
そうは願えども。
「ああ、まぁ…。
聞くつもりは無かったけどな」
とバツの悪そうな顔をして目を逸らした。
そんな彼の表情を初めて見て、顔に熱が走る。
「聴こえてきたなら、仕方ないね。
えっと…言い訳させてもらうなら、別に恋愛とかでスランプになってるわけじゃなくってね、
そのー、先生の思い込みって言うか……うんと、軽い自己嫌悪みたいな。
とにかく、そーいうのは全く関係ないからねっ?!
でも、心配してくれてありがとう。
なんとか頑張れそうだから、大丈夫」
恥ずかしくて、つい早口で一気に弁解してしまった。
けど、どこかスッキリ出来たし
これからは頑張れる気がした。
根拠は無いけど、彼にそう宣言したら本当に大丈夫な気がしてくるから不思議。
ついさっき、教室にいた時は遠いなって思ってたはずなのに、今ではこんなにも近い。
急展開は心臓に悪いけど、それでもこの会話だけで思いの満たされた私は、これ以上貪欲になるわけでもなく
作品が折れないように箱に入れ、着々と帰る支度をする。
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