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はぁー、と深く溜息をつき、彼は徐に私の大きな鞄を持ってドアへと歩く。
思わずポカンとして立ち止まったままの私に向かって
「帰るぞ。
待ってる間、俺も一緒に居るから。
ほら、早く連絡しな」
と言った。
益々思考が停止する。
私の脳みそはシステムエラーを起こし、眼の前がシャットダウンしそうになった。
え…ちょっと待って。
今、彼は何と言ったの?
「一緒に?」
脳裏に反芻していた言葉を無意識に口に出してしまったのが、いけなかった。
「嫌なら嫌って言えば?」
と、不機嫌さを隠そうともせず、わざと視線を交えないように言われる。
でも、いつも淡々としていて冷静な彼が、そんな仕草や言い方をすると、何故かいじけているように見えて、ふっと頬が緩んだ。
「ううん、ありがと」
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