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そう言って、彼の側に追いつけば。
「鍵、貸して」
と言って手を差し出してきた。
それを彼に渡し、戸締りをして職員室へと向かう。
何も会話は無く、薄暗い廊下に響くのはただ2つの足音だけ。
それでも、その2つの一定に響く音は同じテンポを刻んでいて、私のゆっくりとしたペースに彼が合わせてくれているのが分かる。
この心地良い沈黙を壊したくなくて、お母さんへの連絡は電話じゃなくてメールにした。
それに、もしかしたらメールの方が気付くのが遅いかもしれない、という淡い期待を乗せての送信。
チラリと彼の方に目を向けると、彼も同じ様に僅かにこちらを向いていた。
絡まった視線が恥ずかしくて、咄嗟に俯いてしまったけど。
今なら、ほんの少しだけ勇気を出せる気がするから
「…ね、その、ありがと。
心配してくれて、すごく、嬉しかったの」
二回目のありがとうを言うよ。
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