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俯きがちだし、言葉も辿々しいけど、自分の気持ちを伝えるのはとてもエネルギーのいる事だから、そこのところは触れないでほしい。
それでも
「ん。どーいたしまして」
と言ってくれるだけで私は十分だから。
なのに、それだけじゃ終わらなくて。
お礼にさ、と急に立ち止まり、私を見て言った。
「蒼樹が今描いてる絵の作品展、連れてってよ」
思ってもみなかったお誘いに、顔が真っ赤に染まるのを感じる。
舞い上がりそうなのを必死に抑えて
「うん。私も見に来てほしいから、是非」
と言うのが精一杯。
こうやって少しずつ、少しずつ進んでく私たちの関係。
今はまだ、スタートラインに立ったくらいだけど。
お互い言葉にする事があまり得意ではないから、親密な関係になるのはだいぶ時間が掛かりそう。
でも、こんな緩やかな時間も嫌いじゃないから。
ゆっくりゆっくり築いていこう。
そしていつか。
窓際に座っている彼の隣で、いろいろな景色を見ていくの。
今日1人で眺めた、切ない夕空をノスタルジーで浸れるように
窓際の彼[完]
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