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入学してから数ヶ月後、あの子が図書委員だという事を知った。 当番は隔週の金曜日。 …いや、ストーカー行為じゃなくて、本を借りようとして何回か図書室を利用していたら分かった事で、断じて尾行・追跡はしていないと誓える(誰にだ?)。 彼女はカウンターのデスクでよくスケッチブックを広げて何か描いている。 こちらの窓の外をボンヤリと見つめては、思い出した様に手を動かし、その絵の出来具合は彼女の表情を見れば一目瞭然だった。 おとなしいと思っていた彼女は思いの外表情豊かで、特に絵を描いている時のクルクルと変わる顔は 多分ずっと見ていても飽きないだろう。 図書室に通うようになって半年が過ぎようとしているが、事務的な事以外はあまり会話した事が無い。 美術の授業なんて、以ての外だ。 つまらない、とは思う反面 このかなり曖昧な関係に擽ったさを感じる。 こんなことを言うと、よく連んでるヤツに馬鹿にされそうだが 自分だって本当は、もう少し近づきたいさ。と、心の中で愚痴ってみる。
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