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まぁ、変に話し掛けても怪しがられると思うし。 と、気持ちを切り替えて図書室に入ると 彼女は既に荷物を置き、カウンター内で座っていた。 俺もカウンターの斜めの位置にあるソファーに座り、来年映画化される人気小説家の推理小説を読み始める。 元々読書するのが好きだったし、この図書室独特の雰囲気や時間、そして彼女が居る空間はこの上なく心地良い。 本を読んでいる筈なのに、仕事をしている彼女の声をしっかり捉えている。 別に、声が大きいわけでもないのに、と思わず苦笑しそうになった。 ふと顔を上げると、重たそうな参考書やら歴史書を抱え、覚束ない足取りで本を運ぶ彼女がすぐ近くにいて。 あれじゃ危ない、と思った時にはもう行動していて、半分以上の本を取り上げていた。 横(と言っても、身長差がかなりあるので見下ろす形だが)を見ると、彼女は驚いたように口を僅かに開けてポカンとしている。 そりゃそうだろうな、あんまり関わりの無い男子生徒からいきなり取り上げられたら。 でも、驚いてるのは俺も同じ。 考えると同時に動けるなんて、こんなにアグレッシブだとは自分のことながら初めて知った。
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