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空というキャンバスでは橙がだいぶ紺に塗り潰されて、 『夜』と名付けられた作品に変わる。 想いに浸っていて、気付けば辺りは薄暗くなっていた。 思わず口から漏れたのは 溜息ではなく、"好き"という言葉。 私しか居ない教室だけど、零れた想いは 外から聴こえる沢山の音に埋れてしまった。 「もぅ、帰ろう」 ここに居ても何かが変わるわけではない。 ここで想いを告げても、何も伝わらない。 それでも。 また明日、彼に会えればそれだけでいいと思ってしまうのは 臆病な私の悪い癖。
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