0人が本棚に入れています
本棚に追加
美術室に行けば、部活はもう終わったらしく
先生が丁度鍵を掛けるところで、私は慌てて声をかけた。
先生は個展の関係者から連絡があったそうで、忙しいと思い
鍵は私が職員室へ届けます、と申し出た。
申し訳なさそうに、じゃあ頼むわね。
と言うも、すぐに帰る素振りを見せず、私と私の途中描きの絵を見遣る。
「蒼樹さん、最近何か悩んでる?」
ゆっくりと問い掛けた先生の表情は、どこか憂いを含んでいる優しい微笑みだった。
なんて答えて良いか分からずに、ただ立っている私を見つめて
先生は再び口を開いた。
「その絵ね、今までの蒼樹さんとは違う雰囲気だから、何かあったんじゃないかって思って。
それに、いつもインスピレーションで思うがままに描いていたのに、今回はとても試行錯誤して何かを探っているような感じがしてね」
最初のコメントを投稿しよう!