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「……そうか。では、今回の《大和撫子》は…。」
重々しい口調で腕を組む
初老の男性。
「はい。彼女で間違いないかと…。」
それを受け、神妙に答える黒服の男。
スタンドライトだけの光の下で二人は
一人は深々と椅子に腰かけて
もう一人は背筋を真っ直ぐ伸ばして立って、向き合っていた。
そんな、はりつめた空気の中
扉がノックされ、優雅に青年が頭を下げて入って来た。
「お呼びですか?お父様。」
コツコツと、直立している男の横まで進みながら、青年は聞いた。
「《大和撫子》が決まったよ」
悪巧みをしているような
気にかかる笑みを見せながら、
手元の資料を、その青年に渡す。
青年はその表情を
いぶかしげに見てから、
渡された資料に目を落とす。
「!!」
資料を見て、顔を歪ませる青年。
それを見て、さらに笑みをみせてから、
お父様と呼ばれた男は
「もういいぞ。」
と、手をヒラヒラさせ、追い出す仕草を見せた。
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