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「いい加減分かれよ」
壁が鈍い音をたてる。
「お前、《大和撫子》なんだろ?その立場を利用すればいいじゃねぇか」
いつの間にか、側にきていた煉夜さんに腕を強く捕まれて、鈍い痛みが走る。
「本気で、好きなんじゃねぇのかよ!」
「痛い、煉夜さん」
「好きだから、追いかけてここに来たんだろう?」
荒々しい、それでも優しい声に、私は黙る。
お願い、もう離して。
そんな気持ちで一杯だった。
「…嘘だったのかよ」
嘘なんかじゃない。
違う。
本当に、凌央様が好き。
喉まで言葉がでかかって、
抑えるために口を強く結んだ。
震える体に、どうか気づかないで。
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