-招待状-

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「何かお困りのことはありませんか?」 声をかけられ、窓の外に向けた視線を、 その無駄に広い車内に移す。 「いえ、大丈夫です。」 私が笑って対応すると 理事長の秘書だと言う、 30代くらいの、綺麗な女性は、 「何かあれば仰って下さいね」 と、ニッコリ微笑んで 少し離れた車のシートに腰を降ろした。 特にすることもなく、 私は再び窓の外に視線を移した。 大きな塊がギスギス言いながら並んでいる都会を抜け、 辺り一面緑が広がる田舎にやってきた。 民家さえ、あまり見ない。 どこまでも続く田圃と、 先さえ見えない森林があるだけだ  
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