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あまり良く見えなかったが、彼女が向いている方向や、その他諸々から彼女の頬をねらい、人差し指を突き刺してみた。
パクッ
そんな効果音と共に彼女が僕の指をくわえていた。
「何してるんですか!?」
「あなふぁこふぉ、まみしようとしてたふぁのよ」
くわえたまま彼女は喋るので、変に聞こえて、笑ってしまう。
「何なのよ!」
彼女は口から指を抜くと、少し恥ずかしそうに僕を見つめながら、口を膨らませながら言った。
(暗いので、想像です!)
「なんでもないよ」
僕は少し、彼女の口の暖かさを惜しんでいた。
「イヤらしい顔…」
いきなり何を言い出すんだ?
「顔なんて見えないだろ?」
「見えるもん!」
たいしたものだ…
真っ暗闇の中で、僕の顔が見えるなんて、猫くらいなものだ。
「どうやってだよ?」
「…心の目でよ!」
…
…
「何か言いなさいよ…」
「どう見える?」
「えっ…?」
少し疑問に思った…
真っ暗闇の中、男女が二人で密室の中にいるんだ…
何かあるのかも知れない…
「君の心の目では、僕はどう見える?」
…
う~ん…
と彼女は唸りながら、結論を出した。
「変な男の子!」
何も考えてないただの女の子のようだ…
「僕には、変な女の子に見えるよ」
「なんですって!!」
ぷっ…あはは
…クスクス…
両方とも同時に笑いだし、疲れるまで笑っていた。
「もうこんな時間!早く帰らなくちゃ」
「送って行こうか?」
「大丈夫…またね…八雲君」
「嗚呼…またな…明日菜」
それが、僕と彼女の出会いであった。
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