猛暑の一室にて

7/10
前へ
/10ページ
次へ
 暫くの間、感涙に浸っていると、てんでその膨れ続けるのが止む気配にないのに気付いた。ややと近づいてみる。白濁の海を漂っていた氷山は、今では器を打ち破らんがごとく、もりもりと膨れていた。それに、それはちっとも止もうとしない。これでは、せっかくのアイスが零れてしまうではないか。私はもったいない、もったいないと呟きながら、台所から丼の器をもってきた。それを膨張し続けるカップアイスの下に敷く。ついにこぼれ出したアイスがしっかり丼の器に収まるのを見て、私はほっと安心した。  やれやれと一息ついたからか、不意に放尿感が訪れた。あせと用を足しに、トイレへと行く。排尿からか、すがすがしい心持になり、丼一杯のアイスをどうしようか、何日にわけて食べようか。それとも、思い切って一日で食べてしまおうか、楽しげに思考に耽りながらトイレから出た。私のアイスはどうなってであろうかと、顔を丼へと向けるが、今度は丼からアイスがこぼれ出していた。零れ出たアイスが机を濡らすのを見て、私は「おお、まだ増えてくれるではないか」と喜び、今度は、土鍋を持ってきてそれに入れた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加