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外の熱気が室内へと、にじみよってきたことに加え、休むことなく動き続けた私の体は既に限界に達していた。延々と、食器を運び続ける私の様はまるで、炭鉱労働者が土を掘り続けるそれと何ら変わりなかった。目の前に机一杯に広がるアイスにかじりつければ、どんなに私は幸福を感じ得るだろうか。しかし、それは叶わぬこと。一息つく間にアイスは、瞬く間に積みあがってゆく。その時、私には眼前に広がり続けるアイスが、寂れた釣り橋の向こうに重なり続ける金銀財宝のように感じられた。青々とした空に点とある雲からはみぞれが降り注ぐように、翡翠が埋め込まれた金冠に、碧玉の勾玉、透き通った琥珀の首飾りなどがざあと降ってくる。それらに見とれているうちに、金銀財宝の元へとたどり着く只一のつり橋がぎしぎしと、如何にも崩れそうなのに気付く。この釣り橋を渡ってしまえば、私はどんなに幸せを感じ取れるかわからない。
が、渡るが最後、私はもう戻ることはできないだろう。私は躊躇する。そうしている間に、つり橋はゆらゆらと揺れ始める。財宝の山はなおその高さを重ねていく。
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