苦酢

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再びお目にかかる高級マンション。 どれくらいまでの高さなのだろうか。 エレベーターに乗って5Fを目指した。 正俊さんの自宅前に到着。 「はいるよ」 「はい」 正俊さんは髪をムースで固めていかにも社会人というような感じだ。 お気に入りだと言っていたスーツをまとっている。 ホワイトムスクの香りが鼻を刺激した。 ああ、 ホントに会社で仕事あるんだね。 なぜかずきりと胸が痛んだ。 がちゃん、と音をたてて扉が閉まった。 あがって、 と促されてリビングまで足を運ぶ。 向かいに正俊さんが座り、私を見て座るようにと促した。 テーブルについて私は神妙な面持ちで正俊さんを見つめ、 息を吐いてから言葉を紡いだ。 「あのさ、正」 「うん、わかってる」 「おれが悪かったんだ。ごめん」 「…あの、私が勝手にイライラしてたから。正が仕事あるっていって…それだと思う。」 お互い謝りたかったということは理解できた。 正もごめんって言ってくれた。 これでいいじゃないかというように二人は顔を見合せて笑った。 さあ、と立ち上がった正俊さんは時計を見て鞄を持った。 「…あ、とりあえずこれ鍵なんだけど持っててくれる?おれ先に会社行こ うと思って。」 掌におかれたシンプルな鍵。 おそらくブランド物だと思われるキーチェーン。 「まやまだ荷物まとめてないでしょ?終わったらタクシー呼ぶよ。お金はこっちで持ってるから。」 「ありがとう…ごめん、正。」 あやまんなって、 と頭を焼きそばみたいにわしゃわしゃかき回された。 「もう正!」 「はいはい。じゃあ仕事行くから、鍵しめて家に帰っててくださいね。鍵はまや様のご自宅までお伺いしますので」 正俊さんは タンタン、と靴をタップしてから部屋を出て行った。
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