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「詩織と話してみます……」
弁解せずに素直に吐いた。
あたしだって詩織とこのままなのはイヤだ。
「そうか、いい子だ」
偉そうに小笠原が頭をグリグリと撫でる。
こんなとき子ども扱いされるのはもう慣れてしまったから、怒ることはしない。
むしろされるがまま。
最上階にたどり着いたエレベーター。
先に降りた小笠原が手を差し出す。
「ほら」
「え?」
「カボチャ」
「あぁ、はい」
何の気なしに包みを渡すともう一度手が伸びてくる。
「はい?」
「手、繋ぐんだろ」
──もう。
その顔ったら憎たらしいほどのイイ顔。あたしを沸騰させるには充分で。
本当、ズルイんだから。
今日のあたしは相当甘やかされている。
だって、そうでしょ?
昼間といい今といい、いつもと違う甘い小笠原ばかりを見せられて、あたしの胸はキャパをオーバーしてどうにかなりそう。
それでもその手が欲しくて手を伸ばす。
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