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ポツリ言う。
「今更、何やってんだか……」
伸びた後ろ髪をワシワシとかきむしって、
「仕事だ、仕事っ」
邪念を祓うようにそう言って。
照れ隠しなのかあたしの髪をくしゃくしゃ撫でると、デスクに戻った。
あたしの頭はまだ沸騰したままなのに。
もう少し一緒にいたい。でもお暇(いとま)したほうがイイ感じ。
残念だけど、こうなったらもう小笠原は相手をしてくれないだろう。
「あの、じゃあ戻ります。忙しそうだし」
諦めて隣室に続く扉に向かった。
「下川」
「はい?」
「おまえ、その顔ヤバイから加藤には見せんなよ。エロすぎる」
「エ……って」
顔だけ振り向いた小笠原は楽しそうに言い放った。
なんて意地悪。そんな顔に誰がしたのよっ、と言いたい。
片手で顔を隠しながら小笠原を睨んで、あたしは扉に手をかける。
「あ、おい待て。さっきのフォ…なんとかってなんだよ。教えていけ」
……だからっ!
「だからなんでパソコンなんか覚えようとか無謀なこと考えたんですかっ もう、知りませんっ」
「おいっ 下川っ」
「うるさいっ」
「お前、いい度胸してんな。夜覚悟しとけよ」
低い声でつぶやかれる。
──ズルイ。
あたしの顔は益々熱で赤くなった。
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