信じるということ・2

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「先生は食べたことあるんですか?」 「あぁ、でんさんが喰え喰えってしつこくてな。 でもコレはホントに美味かった」 「おい、ちょっと待て」 割って入ったのはでんさん。 「聞き捨てならないな。他のは美味くなかったみたいじゃないか」 カウンターの向こうででんさんがキラリと光る刃物を手にした。 「あ、いや。どれも美味いけどコレは格別美味かったって話だっ。 ホントだ、でんさん誤解するなっ」 両手を振って大袈裟にゼスチャー。 こんなに誰かに振り回されている小笠原は見たことがない。 「本当か」 「本当だ、俺を信じろっ」 小笠原の目を至近距離でじっと見つめるでんさん。 本気なのか、冗談なのか。 微動だにしない。 「ほ、ほらっ、お前も何か言えっ」 その慌てぶりが可笑しくて、もうちょっと見ていてもよかったけれど。 あたしはクククッと笑いながら、 「でんさん、信じてあげてください。この人ウソはつけませんから」 と、助け舟。 「詩子ちゃんがそういうなら信じる」 「俺よりコイツかよ……」 愚痴る小笠原も貴重だった。
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