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「先生は食べたことあるんですか?」
「あぁ、でんさんが喰え喰えってしつこくてな。
でもコレはホントに美味かった」
「おい、ちょっと待て」
割って入ったのはでんさん。
「聞き捨てならないな。他のは美味くなかったみたいじゃないか」
カウンターの向こうででんさんがキラリと光る刃物を手にした。
「あ、いや。どれも美味いけどコレは格別美味かったって話だっ。
ホントだ、でんさん誤解するなっ」
両手を振って大袈裟にゼスチャー。
こんなに誰かに振り回されている小笠原は見たことがない。
「本当か」
「本当だ、俺を信じろっ」
小笠原の目を至近距離でじっと見つめるでんさん。
本気なのか、冗談なのか。
微動だにしない。
「ほ、ほらっ、お前も何か言えっ」
その慌てぶりが可笑しくて、もうちょっと見ていてもよかったけれど。
あたしはクククッと笑いながら、
「でんさん、信じてあげてください。この人ウソはつけませんから」
と、助け舟。
「詩子ちゃんがそういうなら信じる」
「俺よりコイツかよ……」
愚痴る小笠原も貴重だった。
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