8696人が本棚に入れています
本棚に追加
「──ごちそうさまでした」
楽しかった宴も終わり。
ニコチンが切れた小笠原は相変わらず外で一服だ。
「詩子ちゃん、コレ約束の」
手渡された堤袋はまだホンノリ温かくて、小さいのにずしりと重い。
「あ、小豆とカボチャの煮物ですかっ コレ本当に美味しかったからまた食べたかったんです。ありがとうございますっ」
お腹は満腹なのに匂いだけでまた食欲がわいてくる。
なんという魔力。やっぱり料理よね。
最後に人を引き付けて放さないのは食よ、食!
結婚式でも胃袋を掴めっていうもんね。
これからはあたしも料理だわ!
ひとり脳内で決意表明しているとでんさんがつぶやく。
「いや、よかったな。
どうなることかと思ったけど、また詩子ちゃんに会えてよかった」
「そ、そうですか?」
「うん」
意味がわかるようなわからないような。
以前も意味深なことを言ったでんさんだから、あたしたちの変化に気付いているのかも。
途端に気恥ずかしくなったあたしは、へへっと笑うしかない。
最初のコメントを投稿しよう!