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「詩子ちゃん」
コワモテでんさんが急に真面目な顔をして。
「崇をよろしくな。面倒くさい奴だけど、アイツはアレで──」
「けっこう単純」
「そう。それがわかってりゃ、充分だ」
「しかも心配性でヤキモチ妬き、です。……たぶん」
「ぶはっ、そりゃ面白いっ」
でんさんはあたしの肩を叩きながら大笑い。
そ、そんなに面白い?
あたしマズイこと言っちゃった?
「詩子!」
出入り口から名前を呼ばれて慌てて振り返る。今の話を聞かれてたら、相当ヤバイ。
「いつまで喋ってんだ、置いてくぞ」
「い、行きますっ」
小笠原に向かって声を上げるが姿はもうない。
「“詩子”だって。もう完全に観念したんだな」
さっきよりも楽し気なでんさん。
無性にその言葉の意味を聞きたかったけど、あたしは急いで店を出るしかない。
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