信じるということ・2

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「詩子ちゃん」 コワモテでんさんが急に真面目な顔をして。 「崇をよろしくな。面倒くさい奴だけど、アイツはアレで──」 「けっこう単純」 「そう。それがわかってりゃ、充分だ」 「しかも心配性でヤキモチ妬き、です。……たぶん」 「ぶはっ、そりゃ面白いっ」 でんさんはあたしの肩を叩きながら大笑い。 そ、そんなに面白い? あたしマズイこと言っちゃった? 「詩子!」 出入り口から名前を呼ばれて慌てて振り返る。今の話を聞かれてたら、相当ヤバイ。 「いつまで喋ってんだ、置いてくぞ」 「い、行きますっ」 小笠原に向かって声を上げるが姿はもうない。 「“詩子”だって。もう完全に観念したんだな」 さっきよりも楽し気なでんさん。 無性にその言葉の意味を聞きたかったけど、あたしは急いで店を出るしかない。
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