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でもこれだけは言わなくちゃ。
「でんさん、いろいろありがとうございました」
「何だい、急に」
突然かしこまるあたしに背筋を伸ばすでんさん。
あたしはずっと言いたかったことを思い切って言葉にする。
「あの時でんさんに言ってもらわなかったら、あたしは自分の気持ちに素直になれないままだったと思います。
でんさんに気づかせてもらわなかったら……」
でんさんが目を細めてあたしを見た。
とてもとても穏やかな目だ。
「それは違うよ。詩子ちゃんが自分を信じたからだよ。
信じて崇に向かってくれたから、アイツも変われたんだ。
俺は何もしてない」
「そんな……」
「ホント、詩子ちゃんは綺麗になったね」
でんさんのその言葉は、あたしの胸の奥を優しく撫でた。
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