信じるということ・2

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「お待たせしました」 店の前でタバコをくわえた小笠原は眉間に皺を寄せて不機嫌。 「毎回遅ぇんだよ」 「すみません。カボチャの煮物のお礼言ってたんです」 「……ベタベタしてたの間違いだろ」 「は?」 「アイツは油断ならねぇ」 ……何ソレ。 もしかして、ソレこそが──。 「ヤキモチ、ですか?」 「うるせぇっ んなわけあるかっ」 悪態をつきながらあたしが手にした包みを取り上げて、さっさと前を歩いて行く。 でんさんには奥さんがいるんでしょ? 不貞くされた顔……ちょっと可愛い、かも。 小笠原を知れば知るほど、歳の差が縮まる。距離を感じなくなる。 『崇を知ってごらん』 でんさんが言っていたのはこのことだったのかもしれない。 人なんて性格はそうそう変わらなくて、凄く大人(おじさん?)に見えた小笠原も、きっと中身は若い青年のままで。 あたしはその外見や言動に惑わされていただけ。
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