信じるということ・2

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実際はとても真面目で単純で。 優しくて照れ屋で、可愛いくて。 そしてすごく尊敬できる人。 「先生」 行き先も言わずに前を行く姿勢のいい背中に話しかける。 「今日はあたしのおかげで、先生の立場が守られたんですよね?」 クスリと笑う声が聞こえて、そうだな、と返事が返ってきた。 「じゃあ、ご褒美ください」 「ご褒美?」 立ち止まって振り返った小笠原。 そんな傾いだ顔であたしを見下ろす表情も好きだと思う。 「手、……繋ぎたい、です」 離れた後ろを歩くんじゃなくて、隣を歩きたい。 ねぇ、いいでしょ? おずおずと伸ばされたあたしの右手を小笠原はじっと見つめて。 「……ふーん」 暫し考え込む。 でも差し出されたのは“手”じゃなくて、……かぼちゃが入った包み。 「はぁ!? そ、そうじゃなくてっ」 「それで充分だろ」 「先生ぇ」 「ほら、行くぞ」 どこまでも甘くなれない意地悪なヤツ。
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