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結局──。
いつもの道を、いつもの歩幅で付いて歩くだけ。
さっきは縮まったと感じた距離も、また離されていく。
あたしたちはずっとこんなことを繰り返していくんだろうか。
ピタリと寄りそう時なんかあるんだろうか。
舗道に転がる小さな石を小笠原に見立てて八つ当たり。
「そういや宮野がさ」
肩の力が抜けたやさしい声色で小笠原が話し出す。
……宮野? って詩織のこと?
「病棟ナースの宮野。友達だろ」
「……はい」
「まだケンカしてんのか?」
「え?」
思いがけない言葉に俯いていた顔が勢いよく上がる。
「な、んで……」
なんで、知ってるの?
知るはずのない詩織との不和を言い当てられてちょっと動揺。
と、同時にやっぱり詩織と小笠原はどこかで通じているのか、という疑惑が走った。
……目の前がクラクラする。
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