信じるということ・2

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──あの日。 あたしは詩織に小笠原のことで隠し事をされたと思った。 だから無性に苛立って腹が立って。 そしてよく知りもしない由紀ちゃんのことを軽々しく言うものだから感情に火がついてしまったんだ。 あの時、あたしの中で黒いドロドロしたものが生まれて渦を巻いた。 主任の比じゃない。 あたしはきっとどこかで詩織に嫉妬してたんだ。 ずっとずっと、女として仕事人として非の打ちどころのない彼女が羨ましかったんだ。 あの日から連絡はとっていない。 いや、とろうと思えばとれるんだけど、しなかった。 逆に、もしかしたらあたしのほうが避けられてるのかもしれないし。 こんな鬱屈とした気持ちは初めてで、自分でもどうしていいのかわからない。 持て余して対処できない。 詩織に限って小笠原とどうにかなるなんてあるわけないのに。 そんなこと、よく考えたらわかることなのに。 それでもその嫉妬から逃れられない。
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