信じるということ・2

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「あの、先生──」 口を開いた途端唇が重なった。 でも意外にもそのキスは優しくて、触れただけですぐに離される。 「余計なことは心配するな。 だから逃げないでちゃんと宮野と向き合え」 「先生……」 やっぱり小笠原だ。 臆病なあたしのことなんかお見通しですぐバレてしまう。 『逃げないで向き合え』 それはきっと小笠原の信条で。 たくさんの患者と向き合ってきた彼だからこそ言える言葉で重みがある。 どうして忘れていたのだろう。 詩織を、自分を。 今までのあたしたちを信じて向き合えばいいだけだったのに、黒い渦に振り回されたあたし。 まだ浅はかなあたしにはそれを見定めて貫く強さがなかった。 もっと強くなりたい。 もっと強くならなきゃ。
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