信じるということ・2

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そんな態度の悪いあたしにも、小笠原はふふんっと鼻で笑ってなんでもわかったような顔をする。 あたし以上にあたしをわかってる小笠原。 なんか悔しい。 釈迦の手のひらで転がされてる悟空の気分だ……。 なんでいつでも冷静なんだろう。 大人な分だけ経験値が高いから? それはそれで、気分が悪い。 到着した部屋の前。 あたしの手とカボチャで両手が塞がった小笠原は、それでも器用に鍵を取り出して開錠する。 ふわり、と微かな匂い。 部屋から漂うその匂いは確かに小笠原を感じさせて、抱かれた夜を思い出させる。 靴を脱ぎ捨てた小笠原と同じようにあたしもパンプスを脱ごうとするけれど、動揺と酔いでよろよろとうまく脱げない。 「なんだ酔ってんのか」 「酔ってませんっ」 「酔ってるヤツに限って酔ってないって言うよな」 「ほ、ほんとに酔ってないしっ」 支えようとしてくれる小笠原の手を跳ねのけるつもりが、逆にガッチリ掴まれる。 「素直じゃねぇ。さっきはあんな可愛いこと言ってたのに。 どうすると素直になるんだよ」 高い所から見下ろす小笠原はあたしの顎をつかんで泳ぐ目を捉えた。
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