最終章

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「───ちょーっとっ!! なにコレッ!! どうするとキムチ鍋がこんな味になるのよっ!」 「……ごめん……」 「本当、詩子は料理だけは向上しないわねぇ」 ううぅぅ……。 仲直りのおもてなしのつもりがとんだ失敗。 あー、やっぱ止めときゃよかったか。 「貸して。手直しするから」 「て、手伝うよ」 「いい。詩子は座ってて」 立ち上がりかけたあたしの肩をグィッと押えると、鍋を抱えた詩織は小さなガス台に向かった。 カチッと点火してから冷蔵庫に手を伸ばしビールを取り出す。 ほら、と放り投げるのはいつものこと。 「ありがと」 と、受け取るのもいつものこと。 この一連の作業が今日も行われたことが無性に嬉しかった。
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