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「ヤダ。 な、何泣いてんのよっ」
詩織が目を丸くして手にしたお玉を振り回している。
「だってぇ。
また一緒にご飯食べられるなんて思ってなかったから……」
大げさかもしれないけど、これは本当の気持ち。
グズグズと鼻をすすりながら素直にそう吐露すると、詩織がクシャリと顔を崩した。
「……それはこっちのセリフだってのっ」
独り言のように小声でつぶやいた詩織が、見たこともない表情であたしに向いた。
「お、怒ってたのは詩子のほうでしょっ
あんな剣幕で怒ることないじゃないっ
あたしなんか、どうしたらいいのか悩んで悩んで……」
最後のほうはブツブツと聞き取れない音量。
確かにあのときあんな風に怒ったのは悪かったなぁって思ってた。
……けど。
「だって詩織があたしに隠し事するから……」
「してないっ」
「してたっ」
「してないってばっ」
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