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「み、たの?」
「ん、……ごめん」
申し訳なさそうな顔でお玉をニギニギする詩織。
そうか、見られてたのか。
どうやらあたしの嫉妬は小笠原の言うとおり見当違いのようだ。
「心配かけてごめん……」
ううん、と遠慮がちに首を振る詩織に目頭がまた熱くなる。
あたしのちっぽけなプライドは、こうやって詩織に守られていたのかもしれないな。
その場面をずっと胸に収めてくれてた事実。そして陰であたしのために動いてくれてた事実。
やっぱり詩織だ、って思う。
勝手に誤解して嫉妬したことが、本当に恥ずかしいと思う。
「でも、もう大丈夫。
ちゃんとケジメつけてもらったし」
「ケジメ? もしかして振られ──」
「ブ────ッ」
「じゃ、丸く収まったってこと?」
コクンと頷くと詩織が安堵した表情を見せた。
「そっか、良かった。
崇先生に詩子を振り回すな、どうするつもりだって言ったんだけど、うまくかわされちゃって。
あの男、なかなか尻尾出さないわよねぇ。
どうやって仕留めたの?脅したの?」
「脅すって……」
真面目な顔をして詩織が訊ねてくる。
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