最終章

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*** 「先生、今日は早く終われそうなんですけど、夕飯何が食べたいですか?」 「何でもいい」 「何でもって、ひとつくらいはあるでしょ?」 「言っても同じのは出てこねぇだろ」 「そ、そんなことは……」 「ムリはすんな、喰えりゃあいい」 「な、なんか、それはそれで悔しいじゃないですかっ」 「悔しかったらどうにか巧くなれ」 「それには時間がかかるっていうか、なんていうか……」 「だからお前が作れるモンでいいって言ってるだろ」 「でも一応リクエスト……」 「あー、うるせぇっ 仕事中にくだらねぇ電話かけてくんな。 切るぞ」 「あ、せんせ──」 ブチッと切られたピッチ。 もうちょっと優しく言ってくれてもいいんじゃないかと思う。 不味くても美味いよ、とかさ。 あ、矛盾してるか……。 でんさんの美味しい料理に慣れた小笠原の舌に、あたしの料理が評価されるはずがないのは承知の上。 でも、愛情はたっぷりなのよ。 そこんとこ、わかってる? いやわかってないな、きっと。 うぅぅ、やっぱり悔しい。 「崇のバカッ」 医療相談室に誰もいないのをいいことに、思いきり罵倒してやる。 けれど。 自分の実力が分かっているだけに空しい。 はぁーと大きなため息を吐いてパソコンに向かっていると、多田室長が会議から戻ってきた。
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