最終章

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「──室長と仲がいいんですね」 食事を終えて。 シンクで食器を洗いながら相談室でのことを想い出してつぶやく。 小笠原はあたしの横でいつものようにタバコを吸っていた。 このマンションで夕食を共にするようになってからの彼の喫煙パターン。 今まで通りベランダで吸うこともできるのに、何故かキッチンの換気扇の下で、食器を洗うあたしと並んで煙草を吸う。 それはさりげなく始まって、なにげなく続いている。 「ああいうのを仲がいいっていうのか」 白い煙を吐き出して小笠原が渋い顔をした。 「いい大人の男が仲よくしてるってのも気持ち悪ィな……」 「そうですか? いいじゃないですか。 まぁ、見せつけられて、ちょっと悔しかったですけど」 「ふーん……」 キュッ、と水道の蛇口を閉めて手を拭くと、その手を取り上げられた。 「またか」 「え?」 真っ直ぐな目があたしを捉える。 「今度はミツさんに嫉妬してんのか」 「まさか──」 見当違いのことを言われてドキリとする。
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