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何でもそう言えばいいと思ってるんだろうか?
思わず後ろにいる紅に苦笑をもらす。
彼をよく見なくても、着ている黒の燕尾服も赤黒く染まっている。
私の従者であるからには、ある程度の力を持ってなきゃ困る。
要するに弱かったら、話になんないのだ。
その点、紅は申し分ない。
完璧な従者だ。
歩いているうちに、遭遇したのは9体の遺体。
言わずもがな、殺ったのは紅だ。
「輝世様、こちらでございます。」
そうこうしているうちに、最初に入ってきた表玄関の扉を開けてくれている紅が、目の前に。
軽くお礼を言って外に出ると、噴水があり、その前に家のリムジンが停まっている。
そろそろ勘のいい人ならわかるだろう。
なぜ私みたいな小娘が大の男の従者を従えているのか?
なぜ迎えにリムジンがくるのか?
ーーーーなぜ私みたいな小娘が平気で人殺しをやっているのか?
答えは、簡単だ。
「御当主、お疲れ様です。お乗り下さい。」
「ーーーええ。」
私が、家の当主にあたるからだ。
なんとなく、リムジンに乗る前にさっきまでいた屋敷を見る。
その洋風な屋敷は、今では人の気配なんてしない。
もうーーー、血の臭いしかしない。
「どうかなさいましたか?」
車に乗らないでじっと屋敷を見ている私を、怪訝な表情で尋ねる紅。
「なんでもない。ごめん、ホントにもう行こっか。ちょっと疲れちゃった。」
「それは大変でございますっ!さぁ、早く出発です、唯っ!」
「御当主、もうしばしの辛抱でございます。では、出発いたしますね。」
「もうしばしではダメですっ!即刻帰路につきましょうっ!」
「黙れ紅。煩いぞ。言われなくても猛スピードで向かう。」
「いや、道路交通法守ろうよ。私の気のせいじゃなければ、110キロ出てるよね?ここの標識50キロなんだけど?」
唯と呼ばれた男は、水瀬唯<ミナセユイ>。
私を御当主と呼んだ男。
同じく、私の従者で、今はリムジンを運転してる。
長身な紅に負けないくらいに、彼もまた長身。
燕尾服を纏って運転をしながら、黒髪を後ろに撫で付ける様は、なかなか客観的に見てもカッコいいんじゃないかな。
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