これから非日常となる日常。

4/21
前へ
/405ページ
次へ
何でもそう言えばいいと思ってるんだろうか? 思わず後ろにいる紅に苦笑をもらす。 彼をよく見なくても、着ている黒の燕尾服も赤黒く染まっている。 私の従者であるからには、ある程度の力を持ってなきゃ困る。 要するに弱かったら、話になんないのだ。 その点、紅は申し分ない。 完璧な従者だ。 歩いているうちに、遭遇したのは9体の遺体。 言わずもがな、殺ったのは紅だ。 「輝世様、こちらでございます。」 そうこうしているうちに、最初に入ってきた表玄関の扉を開けてくれている紅が、目の前に。 軽くお礼を言って外に出ると、噴水があり、その前に家のリムジンが停まっている。 そろそろ勘のいい人ならわかるだろう。 なぜ私みたいな小娘が大の男の従者を従えているのか? なぜ迎えにリムジンがくるのか? ーーーーなぜ私みたいな小娘が平気で人殺しをやっているのか? 答えは、簡単だ。 「御当主、お疲れ様です。お乗り下さい。」 「ーーーええ。」 私が、家の当主にあたるからだ。 なんとなく、リムジンに乗る前にさっきまでいた屋敷を見る。 その洋風な屋敷は、今では人の気配なんてしない。 もうーーー、血の臭いしかしない。 「どうかなさいましたか?」 車に乗らないでじっと屋敷を見ている私を、怪訝な表情で尋ねる紅。 「なんでもない。ごめん、ホントにもう行こっか。ちょっと疲れちゃった。」 「それは大変でございますっ!さぁ、早く出発です、唯っ!」 「御当主、もうしばしの辛抱でございます。では、出発いたしますね。」 「もうしばしではダメですっ!即刻帰路につきましょうっ!」 「黙れ紅。煩いぞ。言われなくても猛スピードで向かう。」 「いや、道路交通法守ろうよ。私の気のせいじゃなければ、110キロ出てるよね?ここの標識50キロなんだけど?」 唯と呼ばれた男は、水瀬唯<ミナセユイ>。 私を御当主と呼んだ男。 同じく、私の従者で、今はリムジンを運転してる。 長身な紅に負けないくらいに、彼もまた長身。 燕尾服を纏って運転をしながら、黒髪を後ろに撫で付ける様は、なかなか客観的に見てもカッコいいんじゃないかな。
/405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1103人が本棚に入れています
本棚に追加