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端整な顔立ちだけど、基本的に私以外にはさっきのような態度だ。
クールというやつ。
普段から大人しく、繊細な紅とは大違い。
顔だって、紅も美形ではあるけど、髪型が全然違う。
明るいブラウンの長髪を、片側で一つに軽く結っている。
いつだったか、
「輝世様のような髪色にしたかったのです。」
と、何やら嬉しそうに照れた表情をしながら、私に言ってきたけど、どうやら彼は私をかなり溺愛しているみたいだ。
いや、昔からこんな感じだったから、薄々かなり前から気づいてはいたんだけどね。
それに比べて唯の方は、そこまで…
「御当主、お体に大事はないですか?ぁあっ!!小指を負傷なさっているではありませんかっ!おのれ紅。貴様がいながら、何故御当主に傷を負わせた?」
「なんとっ?!もももも申し訳ございませんっ、輝世様!!かくなる上は、僕のこのチンケな命をもって…っ」
スチャッ
って…
「やめんかぁあ!!」
とう!!
「はうっ!」
あ、危ない…
どこからか出した短刀をおもむろに自分の首にあてようとした紅に、私はチョップをかまし、なんとか阻止。
「ていうか私の小指を自分の首で補うなぁあ!その前に小指ただかすっただけだし!!」
ハァハァハァっ
叫ぶなんて久々だから、息切れがっ。
そして何気に紅を見れば…
「き、輝世様…!もっと僕に先程の華麗なるチョップを……!!」
と、かなりキラキラした笑みを私に向けてきた。
「ものっそい気色悪いわぁあ!!」
全力で紅から距離をとる私。
心なしか紅が残念そうにしているのは、気のせいではないだろう。
はぁ。
家のリムジンが狭くなくてよかった。
「唯も!かすり傷ごときで一々騒がない!負傷のうちに入んないから!」
「ですが御当主!その小さいかすり傷ごときから細菌が御当主のか弱く、華奢で清廉なお体に侵入し、あろうことか細菌がそのお体を蹂躙するようなことがあるやもしれません…!」
「…………」
「我々にとってそれは死活問題でございます!」
あれだ。
唯も十分私を溺愛してる。
壮大な細菌君の物語を力強く語っている唯は、現在も110キロを保ちながらリムジンを爆走させている。
顔は無表情なのに、えらく発言はふざけた内容だ。
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