【序章】生命の重さは……

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 先の倍に相当する魔物を地に沈めたころには、ふたりの体力も限界を超えていた。 「……一匹も逃がしてねえだろうな」 「当たり前だ……と言いたいとこだが、正直分からないな……」 「ちっ……。だが、向こうにはエレナもいるし、隊長もいてるからな……。何とかなんだろ」  立てたポールアックスにすがり、片膝をついた体勢のままガイゼルが吐き捨てる。  自身のものか魔物のものか定かではないが、その全身は血にまみれ、左の肩当ても吹き飛ばされていた。  むき出しの左肩は一度外れたのを無理にハめたせいもあり、青黒く腫れている。  かたやレイモンド。疲労の度合いから言えばガイゼルよりもましだったが、右の太股には抉られたような傷があった。  何らかの術を施したらしく、血は凝結して止まってはいたが、半ば麻痺してしまっていた。  ちなみにエレナというのはガイゼルの恋人であり、レイモンドの妹でもある。  レイモンドには妻がいたが、二年前に魔物との戦いの中命を落としている。  今は一人娘と一緒に暮らしていた……。
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