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だから……、満身創痍、疲労困憊のふたりは、立ち上がり得物の切っ先を目の前の一角鬼に向けたのだ。
「レイ……、俺が全力でくい止める。行ってくれ! 何としてもあいつらを逃げ延びさせてやってくれ!」
それは心の底からの願いだった。
本来であれば、将来の義兄相手でも、人に頼み事などする男ではない。
それを分かった上で、いや分かったからこそ、レイモンドは首を縦に振らなかった。
自身の満足に動かない右足を見やり、口を開いた。
「悪いがこの足じゃ無理だ。……それに、お前の方にこそ生き延びなきゃならない理由がある!」
「なに!?」
「自分で言うからって言われてたんだがな……、エレナのお腹の中にはお前の子がいる……」
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