【序章】生命の重さは……

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 ガイゼルの『鬼人化』を横目にレイモンドも術を発動させた。  胸の前で両の掌を上下に向かい合わせに構えると、その間からどす黒い煙が生み出されていく。  ゆっくり膨張した黒煙はふたり、いやガイゼルを覆い尽くした。  『鬼人化』を完了したガイゼルだが、そこから再び吸気を始めていた。  だが今度吸い込むのは、レイモンドの黒煙。  常識ではあり得ない吸引力だが、これも“息吹”ゆえだ。  先程と同様のプロセスを経て、ガイゼルの肉体は鈍い黒鉄色に変わり、髪はつやひとつない漆黒に染まった。  『魔人化』……。  半端ない心身への負担のため、このふたりに畏れから封印されていた術。 「──ガハッ!」  全身に力を入れようとした瞬間にガイゼルは咳き込み、吐き出されたのは拳大の血塊……。
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