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摘まみ上げた陶器の欠片が、手の中で砂と化す。
「……いったいどれだけの歳月で……?」
そう言いたくなるほど、その村は風化しかけていた。
だが、魔物の骸自体はまだ新しく見える。
しかも信用できる情報では、この村は生まれて一年も経っていない……。
「一ヶ月……。この村は一ヶ月前に滅んだんだよ」
突然の声は左側の家屋の陰からだった。
距離にして一メートルほど。
私に気付かれずにこの距離まで!? などと考えるのは時間の無駄だ。
意識より早く左手が動く。
瞬きひとつの間に抜き放たれたショートソードが男の首筋に当てられていた……。
「…………」
無言のまま男の様子を窺うキャスティン。
「あれ? 普通『誰?』とかって聞くとこじゃね?」
刃を頸動脈に当てられたままの男の声には怯えも焦りもない。
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