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「だって問答無用で殺しちゃうほど考えなしには見えないじゃんか」
笑みはそのままクロイツが言葉を返す。
そうして挙げたまんまの右手の人差指だけ曲げてキャスティンを指差す。
「それにさ……、実力隠してんのって、キミもだろ」
その台詞にキャスティンの顔がわずかに強張る。
そう男が見抜いたように、キャスティンの利き腕は左ではない。
だが、本来の能力まで把握できるはずもないため、一瞬の強張りはすぐに消えていた。
それにいまいち理解しきれない男ではあるが、少なくとも悪い人間には見えなかった。
「……あ~~、そろそろこの剣どけてくんないかな?」
相手のちょっとした心情の変化に敏感なのはクロイツの特技だ。
人好きのする極上の笑顔を向けながら、自身の首に当てられている刃を軽く爪で弾く。
「わかりました。その代わり──」
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