【幕の一】惨劇の跡

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「ちょっと目を離した隙にもう。キミ大丈夫だった?」  クロイツの抗議の声が聞こえているのかどうか。  先ほどブーツを投げつけた本人とは思えない女がそこにいた。  スラリとした洗練された容姿に、綺麗なエメラルドの髪。  先の台詞がなくば、おしとやかな女性と見える彼女はクロイツの幼馴染みであるロサリオ・クノーソスであった。  キャスティンに呼びかける二人称『キミ』のイントネーションがクロイツとほぼ同じなのは、どちらかのが伝染ったのであろうか。 「いえ、私は大丈夫ですけど……」  言いながらキャスティンは、ふたりとは異なる気配に気付いていた。  とはいえ、害意どころか警戒心も感じられない気配ではあった。
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