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真夜中に少年が目を覚ますと見知らぬ男がベッドの隅でうずくまっていました。
「一緒に遊ぼうよ」と男は言います。
驚く少年をお構いなしに「君にも出来るよ」と男はベランダから空を飛び始めました。
ベッドを見るともう一人の自分が眠っています。
少年は今が特別な状況である事を理解しました。
ベランダから思い切ってジャンプすると男と同じようにフワフワと宙を舞う事が出来ました。
それからと言うもの少年は毎晩男と真夜中の散歩に出掛けるようになりました。
時には友達の家を覗きに行ったり、時には輝く星まで競争したり、少年は毎晩が楽しくて仕方ありませんでした。
「今日で君と遊ぶのは最後になるんだ」
ある日の真夜中に男が残念そうに言いました。
少年も残念で仕方ありません。
いつものように男がベランダから空を飛ぶと「今日はたくさん楽しもう」と少年に手を差し出しました。
少年はベランダを乗り上げ男の手に掴まろうとしました。
しかし、何故か少年の手は男の手をすり抜けて、ベランダから真っ逆さまに落ちてしまいました。
次の瞬間には男のけたたましい笑い声が聞こえてきました。
少年は落ちながら、ある事に気付きました。
今日この日…
もう一人の自分がベッドにはいなかったのです。
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